浜千鳥女房

沖縄には、昔から伝わる“民話”がたくさんあります。

そんな中でも今回紹介する話は「浜千鳥女房」

昔、沖縄県のとある海辺に若い夫婦が住んでいました。女房は、毎日漁船から魚を受け取って、それを市場で売る仕事をし、夫は、家の家事に専念するという生活をしていたそうな。

「仕事が夫婦逆なのでは!??」そう思った方も多いですよね。。。その当時沖縄の女子はよく働いていたので、きっとこの女房もそうだったのかもしれません。

そんな毎日を過ごしていたある日、いつものように市場へ出かけていった女房の帰りが遅いというので、心配になった夫が捜しに行きました。しかし市場へ行っても、妻の姿は見えません。浜辺にもいない・・・。
「女房を見ませんでしたか?」とその場にいる人に聞いてみても、誰もその姿を見た者はいませんでした。

その後も妻を捜して、歩いていると小さな鳥が干してある網に絡まって動けなくなっているのを見つけたので、夫はその鳥を網から外して逃がしてやったんだそう。

「もしかしたらもう家に帰っているかも・・・!!」と帰宅してもやはり妻の姿がない・・・寝ずに待っていましたが、とうとうその日、女房は帰ってきませんでした。

それから何日かたったある日、夫が縁側に座ってぼんやり外を眺めていたら、今まで見たことのないような綺麗な女性が、敷地内の井戸の前まで来て、洗濯をし始めたんだそうな。「何処の人だろう・・・」と疑問に思いながらも、何も聞くこともなく過ごしていたら、時々訪れては洗濯をするようになりました。

ある日、夫が仕事から帰ると、家の台所でその女がご飯の支度をしていたので「ここは私の家なのですが、あなたは何処の人なのですか?」と尋ねると「私は、あなたへの恩返しに食事の支度をしておりました」と・・・。その言葉に夫は、洗濯の際に井戸を使わせてもらったお礼かな・・・!と思っていました。

夜ご飯を食べ終えた後、まだ女の名前を知らなかった夫は「まだ、あなたの名前を教えてもらっていませんが」と聞くと女は「私は、千鳥と言います。ですがこの名前を誰にも教えないでください」と・・・。それからというもの、千鳥が毎日家に来ては、食事・洗濯・掃除など、家の仕事をこまめにやってくれたそうな。

夫の友人が用事で家に来たある日、女房がいるはずの夫のところに、違う女性がいるものだから「どういうことだ」と尋ねると、つい女性の名前を友人に教えてしまいました。それを聞いていた千鳥は、悲しい顔をしてうつむいたまま・・・。

友人が帰った後、千鳥は「この名前をあなた以外の人に知られてしまったからには、もうここへいることは出来ません。実は私、
浜で網に絡まっていたあの小鳥なのです・・・」というと、綺麗な女からだんだん“浜千鳥”へと姿を変えて「ピーッ」と鳴きながら飛んでいってしまったそうな。