まだ犬と猫が同じように家の中で飼われていた頃のお話。
ある日のこと、ある村の大きな家が泥棒に入られてしまって家の宝物が盗まれてしまいました。 そこで主人は飼っていた犬と猫に「盗まれた宝物を一緒に探してきなさい」と言いました。
一緒に探しに出た犬と猫はやっとの思いで泥棒の家を見つけ出しました。ところが家の門が閉まっていて猫はともかく犬は中に入ることができません。しかし猫が門の傍らから上がって中に入り門の鍵棒をはずして門を開けてくれたことで、犬も中に入ることができたのでまた一緒に宝物を探しだしました。
すると、天井に隠してあった宝物を猫が見つけ出し、口にくわえて犬と一緒に主人の家に帰ろうとしました。しかし、途中にあった川が雨が降ったせいで水位が上がり猫は渡ることができなくなってしまいました。それなのに泳ぎの上手な犬は泳いでひとり先に帰ってしまいました。それを見て猫もなんとか川を渡ろうとしたけれど溺れてしまい宝物を川に落としてしまったのです。
先に帰った犬は、主人に「宝物はあったのか?」と聞かれても「なかった」と答え、「一緒に行った猫はどうした?」と聞かれると「途中で降った雨のせいで川の水が増えて川が渡れず川のそばにいる」と答えました。
その頃の猫は、宝物を落としてしまったことに落ち込み、川のそばで水が引くのを待ってました。すると、下流の方に死んだ魚が浮いているのを見つけました。お腹の空いていた猫がその魚を食べると、魚のお腹の中に落としたはずの宝物が入っているのを見つけました。猫は大喜びで宝物を持って主人の家に帰りました。
猫が家に帰ると、主人に「犬よりずいぶん帰りが遅いが、どうしてこんなに遅くなったんだ?」と聞かれ、川であったことを話し持ち帰った宝物を主人に渡しました。それを聞いた主人は、「猫はいつも私のそばで生活しなさい」と言い、ウソをついた犬には「外で門番をしていなさい」と言いました。
こうしてそれまでは一緒に生活していた犬と猫だけど、犬は外で門番、猫は家の中で生活するようになりました。このことが原因で犬と猫はすっかり仲が悪くなってしまったとさ。
おしまい。
とまあ、犬と猫の仲が悪くなってしまった理由だと言われているお話でした。他にも猫が必死で探し出した宝物を犬が奪い主人に持って帰ったけれど、嘘がばれて犬は怒られ外で門番、猫は可愛がられるようになったからだとか、犬が見つけ出した宝物を猫が奪って持って帰り猫に手柄を取られてしまったからという説もあります。
手柄を取られて怒るのはわかるけど、他は猫をおいて帰ったりウソをついたりしてる犬にも悪いところがあるし、しょうがない気もするけどちょっとかわいそうですよね。ご主人さんもまた泥棒に入られないようになにか理由をつけて門番させたかっただけだったりして・・・。
私だけなのかもしれませんが、犬には庭に小屋があって誰か来たら吠える番犬みたいなイメージがあります。もしかしたらこのお話が関係しているのかもしれないんですね。
またこのお話は、仲がすごく悪いことのたとえで「犬猿の仲」ということわざがありますが、このことを沖縄の方言で「犬(いん)とぅ猫(まやー)」と言われるようになった由来だとも言われています。